稲 庭 城
秋田県湯沢市(旧稲川町)稲庭町字古館前平
立地・構造

稲庭城 概念図
 稲庭城は雄物川の支流 皆瀬川中流域の右岸、西方向に張り出した稜線ピーク(標高352m 比高180m)に築かれた山城です。規模は推定 東西650m×南北350mほど、城縄張りは大きくは小ピークに敷設された二の郭ー主郭ー東郭からなる変則的な連郭構造で構築されています。規模は主郭が東西50m×南北60m、二の郭が東西30m×南北90m、東郭が東西60m×南北20−25mほど、主郭・東郭間は痩尾根で繋がり、主郭・二の郭間は高低差50mの急傾斜の稜線で繋がり、それぞれが独立した郭群を構成しています。大手筋は西麓からのルートが想定され、二の郭⇒三重堀⇒主郭に繋がっていたものと思われます。なお二の郭南端に櫓台と思われる土壇が築かれ、背後の鞍部は三重堀で切られ二の郭の独立性を担保していることから、築城当初の稲庭城二の郭主郭とした小砦と推測され、のちに背後の丘陵ピークに主郭を構築したものと思われます。

 築城時期・築城主体ともに不明。一説に鎌倉中期(1261−75年頃)、雄勝郡に入部した鎌倉御家人 小野寺道綱の庶子家 六郎経道が山麓に居館を構え、のちに稲庭城は順次 拡張整備されたものと伝えられます。そして経道は嫡子の忠道を稲庭城に、次男の道直を西馬音内城に、三男の道定を湯沢城に分知し稲庭小野寺氏の嫡流は稲庭を拠点に惣領支配し、南北朝ー室町初期頃までに雄勝郡の有力国衆に成長していたものと思われます。そして応永ー正長年間(1394−1428年)頃、中務大夫泰道の代に小野寺氏は平鹿郡に進出して稲庭から沼館に拠点を移します。この際、泰道は稲庭に次子 晴道(道広)を配し、晴道の家系(稲庭小野寺氏)は道綱ー道長ー道晴と続きました。しかし蔵人道勝の代の文禄4(1595)年、稲庭城は最上義光の雄勝進攻により落城し、ほどなく廃城になったものと思われます。
歴史・沿革
稲庭城 北西側からの遠景
メモ
鎌倉御家人 小野寺氏の雄勝入部初期の館城
形態
山城
別名
・・・・・・・・・
遺構
郭(平場)・虎口・土塁・櫓台・堀
場所
場所はココです
駐車場
西麓に稲庭今昔館の駐車場あり
訪城日
平成16(2004)年11月6日 平成17(2006)年10月27日 令和3(2021)年5月12日
稲庭城 遠景 稲庭城 遠景
稲庭城は皆瀬川沿いの狭隘地、稲庭地区背後の丘陵上に築かれた山城です。(写真左上ー北西側からの遠景 写真右上ー西側からの遠景) でっ、往時の大手口は西麓に設けられ(写真左)、ここから大手導線は西側斜面につずらおれに敷設されています。でっ、導線は尾根稜線を迂回するように敷設され(写真左下)、西側に延びた尾根筋に二重堀が確認できます。(写真右下ー写真画像では藪々々ですが ・・・・・)
その後、大手導線は急峻な断崖につずら折れに敷設され(写真左上)、小郭群を経て(写真右上) 二の郭北側の段郭群に辿り着きます。(写真右・左下) 段郭群は1.5−3mの段で区画された5−6段からなるようです。
二の郭(写真右下) 規模は東西30m×南北90mほど、現在 中央に模擬天守閣(稲庭今昔館)が建てられています。でっ、南端に高さ3−4mの櫓台が築かれ、皆瀬川流域を一望にできます。築城当初の稲庭城は現在の二の郭「要害」とした山城だったのかも。
稲庭城 二の郭
稲庭城 二の郭 稲庭城 二の郭から北方向
稲庭城 三重堀切
(写真左上) 二の郭の櫓台
(写真右上) 皆瀬川下流方向
二の郭から主郭に繋がる南東側稜線の鞍部(幅5m×長さ60m)は三重堀で遮断されていたようですが、現在は車道敷設で消滅し、側面に竪堀状の遺構が確認できるのみ。(写真左ー三重堀 写真左下ー外堀、幅6−7mほど 写真右下ー中堀、幅10mほど、土橋あり)
稲庭城 三重堀切(外堀) 稲庭城 三重堀切(中堀)
稲庭城 主郭西側の堀切
で、三重堀を越え主郭に繋がる尾根を登ります。(写真左上) 尾根道は急傾斜になっていて、途中 6−7m切り落とした堀で切られています。(写真右上) でっ、堀を越えてしばらく登ると導線沿いに7−8段の段郭群が敷設されています。(写真右・左下) とはいっても郭群は藪々々・・・・・。
主郭(写真右下) 規模は東西50m×南北60mほど、以前 来たときは藪々々だったのですが、下草が刈られ石祠が祀られています。でっ、北ー西ー南側斜面に郭群が敷設されているようですが ・・・・・、ハッキリしません。
(写真左上) 主郭の石祠
(写真右上) 主郭・東郭間に堀が設けられず鞍部で区画されています。
東郭(写真左)) 規模は東西60m×南北20−25mほど、内部は東西2段に加工されています。でっ、東側稜線は二重の堀で遮断され、ここで稲庭城は完結します。(写真左下ー内堀、幅7−8m 写真右下ー外堀、幅10m)
稲庭城 東郭東二重堀(内堀) 稲庭城 東郭東二重堀(外堀)
稲庭城 東郭北二重堀(内堀) 稲庭城 東郭北二重堀(外堀)
東郭の北側稜線は高低差の大きい二重堀で切られています。(写真左上ー内堀、5−6m切り落とし 写真右上ー外堀、深さ2−3mほど)
ー 動画 稲庭城を歩く ー
秋田の中世を歩く